カラフトワシ
Greater Spotted Eagle   Aquila clanga




体長♂67cm-♀70cm 翼開長158-182cm トビ(Milvus lineatus)より大きいが、オジロワシ(Haliaeetus albicilla)よりは小さい
オホーツク圏では迷鳥として過去1例[1972年2月2日/斜里町知床半島/2羽]の記録が報告されている(知床博物館研究報告第1集,1979)。ただし、この古い記録については「カラフトワシ2羽が弁財トンネル手前の林中で観察された」と記されているのみで、写真等の客観的な判断材料がなく、また観察時の詳細な状況や個体の特徴等についての言及もなく、同定の根拠が不明である。本種がオホーツク圏に渡来する可能性を否定するものではない(むしろ可能性は十分にあるものと思われる)が、この記録については再検討の余地があるものと思われる。なお、近年当会および筆者(管理人)個人に寄せられた数件の「カラフトワシと思われる猛禽類」の情報については、写真を精査した限り、全てにおいて「尾羽が著しく磨耗したトビ」と判断されるものであった。「カラフトワシはトビ程度の小さいワシ類で、樺太(サハリン)にもいるからもっと渡来しているはずだ」という先入観が判断を誤らせているのかも知れない。実際には本種はその名に反してサハリンに分布しておらず、体も数値よりは大きく感じ、少なくともトビよりは大きく見える。
トビは小さくて翼は幅も長さも短く、飛び方はより軽い。通常は混同する恐れはないが、極端に摩耗した個体を不良な条件下で観察・撮影した際などに誤認することがあるので注意が必要。カタシロワシ(Eastern Imperial Eagle/Aquila heliaca/オホーツク圏未記録種)は大きく、成鳥は頭頂から後頭部が黄褐色で、肩羽に白色斑がある。幼鳥は全体的に淡褐色。飛翔時、翼と尾はより長く見え、帆翔時の翼は水平。イヌワシ(Golden Eagle/A.chrysaetos)は大きくて成鳥は後頭部が黄金褐色で、幼鳥は翼と尾の基部に白色部があってよく目立つ。飛翔時は翼と尾がより長く、帆翔時の翼は浅いV字。オジロワシ(Haliaeetus albicilla)の幼鳥は大きくて全体にがっしりとしており、個体によって程度に差はあるものの尾の基部が白い。全体に白斑が散在するが、本種の幼鳥のように整然と並んだ印象はなく、不規則に散らばっている。

参考文献
「北海道野鳥図鑑(河井大輔、川崎康弘、島田明英)」亜璃西社 2003
「決定版日本の野鳥590(真木広造、大西敏一)」平凡社 2000
「Birds of East Asia(Mark Brazil)」Christopher Helm 2009